遍路が巡礼中にであう景観を要素に分けて分析した。遍路が歩く空間には、日常の生活空間を離れて異界を旅していると感じさせる景観要素がちりばめられている。岩山、岩壁、洞窟、亜熱帯樹林、盆地、海などである。これら異空間が遍路に、思索するきっかけを与えている。また町や農村では、逆に日常生活空間として、遍路に人生や死の持つ意味を考えさせる契機となっていることを示した。遍路にとって巡礼のプロセスとしての遍路道が大きな意味を持っている。 ヨーロッパの巡礼地との比較により本尊に対する宗教的態度の違いや、聖地としての性格の違いを考えた。日本では、仏像を直接に拝むより、そのものを含む空間が重要である。、遍路道の景観が精神的な感慨を大きく考えるという主張をした。 遍路の持つ納経帳の分析では、江戸時代末期から明治時代にかけて高知県と愛媛県南部に遍路が入っていないことを納経帳の記述より示した。高知県に入らない代償として、土佐十七ヶ寺の遥拝所や、南伊予の遥拝所寺院があったことが分かった。遍路の経路も石鎚山に登山して松山の南に抜ける山越えの遍路道があったのではないかと推測している。
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