研究課題/領域番号 |
10680086
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
堀 信行 東京都立大学, 理学研究科, 教授 (40087143)
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研究分担者 |
高岡 貞夫 専修大学, 文学部, 講師 (90260786)
岡 秀一 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (50106605)
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キーワード | 霊山 / 色季 / 色彩景観 / 植生景観 / 景観認識 / 景観生態学 / 空間構造 / ドメスティケーション |
研究概要 |
本研究は日本の霊山の自然植生景観を対象にし、それに対する人為的な干渉をドメステイケーションと称し、その地域的変化についての検討を行ってきた。日本人の植生に対する選択的な嗜好感覚が、霊山の自然植生景観の樹種構成とそれらの分布に人為的な干渉が働き、それぞれの地域固有の霊山を生み出してきたと考えられたからである。本年度は早池峰山、富士山、伯耆大山、厳島、石鎚山などで植生調査と聞き取り調査を中心に現地調査を行った。 早池峰山はその取り付きの長さが一つの森厳さを醸し出しており、山域上部を占めるハイマツ群落に加えてコメツガ低木群落などの存在がそれをさらに強調する役割を果たしている。一方富士山では、その人為干渉の凄まじさが他の霊山に比べようもないが、それでもその孤高の自然条件の厳しさ故に人々の畏敬には深いものがある。しかし、基本的には人々に意識される霊山空間は森林限界よりも上位であり、まさに森林限界は天地の境界である。富士山は若い山であるが故に植生も発達途上であるが、その森林限界に注目した植生動態がある程度明らかになった。 常緑広葉樹の生育域に当たる厳島ではスギのほかにサクラやモミジといった季節変化を意識させる樹木の植裁が特徴的であり、直接・間接の人為干渉が一つの霊山空間をつくりあげている。それに対して石鎚山は四国第2の高さを誇り、常緑広葉樹林・落葉広葉樹林・常緑針葉樹林という垂直分布帯が明瞭であり、山の険しさも相俟ち、霊山空間形成に自然植生景観そのものの果たす役割が大きくなっている。 今後、霊山相互の関わりについて吟味しつつ、聖地の空間構造を踏まえて植生図の作成を試み、さらに歴史資料の検討も含めて、植生景観の成立過程を時間軸を導入しながら考察する予定である。
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