本年度は昨年度に引き続き、中国関係の図書・資料を豊富に所蔵する図書館・研究機関で近現代の中国の集市貿易に関する記事と様々な地図資料、統計資料の収集につとめた。また広東省で墟市のデータベースを作成し、墟市ごとに立地、規模、出店数、墟期、参加者数、主要商品等の属性を入力した。そして異なる地域において、集市貿易と集市(墟市、街市、場市、集市)の実態とその変容について比較分析した。さらに経済政策の揺れによる集市貿易の変化を、中華人民共和国建国から経済の改革開放政策実施後まで詳細な資料分析にもとづいた解明を試みた。研究の成果は以下のようにまとめることができる。 1.建国後の集市貿易は、左右に揺れる経済政策のため度々評価が180度変わり閉鎖を繰り返した。しかし大躍進や文化大革命の時期でも日常生活の必要から厳しく取締まられても数多くの集市が交易活動を続けた。 2.経済の改革開放政策の実施後、集市貿易は全面的に再開され、市場経済を農村に浸透させ商品の取引を活発化することで経済発展を牽引する役割を期待された。人々が現金収入を得る最も手っ取り早い方法であるため、集市の数は1980年の1997年には約8万7千と倍以上に増加している。 3.集市貿易の有様は都市と農村で、また経済発展水準の違い、社会や文化の違いなどにより地域により大きな違いがある。一般的な傾向としては定期市から毎日市・常設市へ、市場も街路沿いや広場の露店から建物内の店舗へ、また高層化しつつある。 4.集市貿易は多数の人々が参集するため、単に商品の売買の場であるだけでなく、明清時代同様、様々な機能が集積する中心地としての役割が大きく、娯楽施設などの建設も進められている。
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