本研究ではつぎの4つの課題に関する調査、実験が進められ、成果は以下の通りである。 1)Pg前駆物質とされる菌核様粒子の形態と化学組成解明(平成10年度〜12年度) 2)表土Pgの分布規定要因の解明(平成10年度〜11年度) 3)テフラ、レス古土壌断面を対象としたPgの年代分布の解明(平成10年度〜12年度) 4)腐植酸中に含まれるPg組成の相違性の検討(平成12年度〜) 菌核様粒子の基質におけるアルミニウムの濃縮、菌核形成要因として土壌の交換性アルミニウムの存在が明らかとなった。また表土Pg吸収強度は土壌の交換性アルミニウムと関係がみられることが明らかとなった。これらの知見は土壌の無機有機複合体形成における生物作用を考える上で極めて重要であり、さらに環境指標としてのPgの解釈において、土壌交換性アルミニウム含量を相対的に増加させる土壌溶脱作用の支配環境因子として低温ないし多雨が指摘された。またわが国の火山灰・古土壌系列および中央ヨーロッパのレス・古土壌系列から採取された試料を用いて腐植酸Pgの年代分布を求めた結果、Pgは約5万年前と14万年前の火山灰性古土壌から、レス古土壌については5万年前の層位から強く検出され、古気温曲線に対応したPgシグナルの変動が確認された。さらに、Pgの分析手法としてクロマトグラムのパターン分析を検討した結果、Pg組成が10成分に分離され、その組成比を用いてPgの相違性を論じるための基礎的な手法が確立された。
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