サハラ砂漠南縁地帯の乾燥地域のサヘルにおいて、土壌水分・植牛(葉面積指数)の現場観測をこれまでの観測とあわせて計6年間継続した。ここで観測された土壌水分データを検証データとして用い、平成11度までに、土壌水分量を再現する簡単な統計的モデルを開発した。これに加えて、今年度は、日々の降水量・気温から計算できる簡単な水収支モデルを開発した。両モデルとも高い精度で土壌水分量の季節・経年変化を再現できることが確かめられた。これらのモデルを用いて、降水量→土壌水分量と経年的な偏差が伝播する様子が確認できた。 一方、土壌水分から大気状態への影響を検討するため、上記の水収支モデルによる土壌水分量と気温の経年変化の関係を最近50年の期間について調べた。その結果、降水量の増加(減少)→土壌水分量の増加(減少)→気温の低下(上昇)という関係がある時差をもって生じることが明らかになった。この気温偏差は短い雨季の終了後1ケ月程度持続することも確かめられ、地表面熱収支の解析から、土壌水分量の増加(減少)→気温の低下(上昇)の関係には、顕熱輸送量の変化が介在しているこが示された。以上上の結果より、土壌表層付近の土壌水分がある年の雨季から次の年の雨季にかけて降水量の偏差を引き継ぎ伝播する役割は担っていないことが明らかになった。しかしながら、土壌水分が混合層の発達にどのような影響を及ぼすかについては調べられなかった。
|