研究概要 |
地表地震断層が生じた逆断層について,地表地震断層と後期更新世以降の変位の累積の結果である活断層地形の関係を,地形学的に解明した.本年度は,善光寺地震断層(1847年)・北丹後地震(1927年)の郷村地震断層群を取り上げた. 善光寺地震断層について,大縮尺空中写真の判読による地表地震断層の位置の復元や,活断層(善光寺断層等)地形と関係について現地調査によって検討した.その結果,1847年善光寺地震断層は,扇状地を変形させる北西側隆起の比高3〜20mの低断層崖の位置にほぼ一致して現れたことが分かった.善光寺地震断層の北東延長で同地震断層と同時に現れたとされる城山・三才・浅野・長丘・飯山・長峰の各地震断層の出現位置も,既存の低断層崖の位置とほぼ一致する.地震断層と低断層崖(活断層地形)の隆起センスは北東側隆起で調和的である. 郷村断層は左横ずれ断層であるが,西側隆起の逆断層変位を伴い,郷村地震断層群ではこれと関係した縦ずれや撓曲変形が沖積低地を中心にして明瞭に現れた.しかし郷村断層の断層変位地形は比高が50〜100mを越す断層崖が大部分で,断層が横断することが予想される山地丘陵を開析する沖積低地上に,低断層崖等の後期更新世以降の活動の証拠は発見できなかった.したがって郷村断層では,後期更新世における活断層地形と地表地震断層の位置関係についてはいまだ不明な点が多い. 逆断層が活動し発生した1999年9月21日集集地震(台湾大地震)の地震断層を調査する機会を得た.地震断層は,既存の車籠埔断層の断層変位地形の位置とほぼ一致した場所に現れ,本研究で扱っている日本の逆断層性地震断層と同様の性質を持つものであることが明らかになった.
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