本研究の目的は、先行研究より家族における個人重視の意識誕生の経緯をまとめると共に、中学生がいる家族を対象に調査を行い、その家族における個別化と凝集性のダイナミズムのありようが中学生の自己有用感や自尊感情、および夫妻のマリタルアイデンティティ(MI)に及ぼす影響を明らかにすることである。家族における個別化と凝集性のダイナミズムは、次のような項目でとらえた。 中学生の個別化-空間や情報機器の個別所有、金銭的自由、ひとりの夕食頻度など。 夫と妻の個別化-専用空間の有無、金銭的自由、ひとりの夕食頻度、レジャーを目的とした個人の外出、別室就寝、家族・夫婦・親子における個人化意識、適度な距離感と対等性など。 中学生がとらえた凝集性-親子間のコミュニケーション、ファミリ一アイデンティティなど。 夫と妻がとらえた凝集性-夫婦間コミュニケーションの量と質、同伴行動、ファミリ一アイデンティティなど。 調査は、高崎および前橋に在住する中学生とその両親900セットを対象に、1999年10月〜11月に実施した。配布は中学校を通して行い、両親はすべてを中学生は一部を郵送により回収した。有効回収数は、中学生479票(回収率53.2%)、妻287票(同31.9%)、夫262票(同29.1%)であった。分析の結果、以下の諸点が明らかになった。 1.全体として、家族の個人化・個別化は確実に進んでいる。2.家族の凝集性については、維持されている家族の方が多いが、弱まりつつある家族も2、3割はいると見ることができる。3.MIの高い夫婦に見られる特徴として、対等性を感じている、情緒的癒しと刺激の会話得点が高い、ファミリ一アイデンティティ得点が高い、同伴行動が多い、などが指摘できる。
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