研究概要 |
熱・水分移動測定装置(サーモラボ、カトーテック製)により、熱板から環境への熱水分の移動を材料の水分率を変化させて測定した。試料としては、片面に起毛した2層構造をもつスポーツ用素材2種と綿、ポリエステル100%のトリコットを用いた。試料を含水状態にし、20℃、65%r.h.の環境で、時間ごとに3分間、熱損失量を測定し、試料が標準状態の平衡水分率にいたるまでこれをくり返した。2層構造布の場合、どちらの面を熱源側にするかによって、同じ水分率であっても、布の熱損失量が異なることがわかった。すなわち、熱損失量には試料表面の性質が大きく関与している。 次に、綿100%の試料と裏地に用いられるキュプラ、レーヨン、ポリエステルのタフタをそれぞれ重ね合わせ、2枚の試料を通過する熱損失量を測定した。この時、発汗をシュミレートするために、熱板上に湿潤濾紙をおいた場合と、湿潤濾紙と試料間に2mmのスペースをつくり、試料下がほぼ100%r.h.の高湿状態になった場合について検討した。標準状態の熱損失量の差が小さい薄い裏地の場合との組み合わせでも、水分にはやく接する側に、どの素材をもってくるかで、2枚全体としての熱損失量は異なる。また、湿潤濾紙上に直接試料を置く場合は、その材料のウィッキング性の差もみられた。 肌触りを考える上で,ぬれた布が皮膚に密着する面積が少ない、あるいは密着して布がはやく皮膚から離れれば、不快な感覚は小さくなる。そこで、肌離れ性を評価するための方法を検討した。模擬皮膚上に水分を含んだ布をローラーで密着させ、その後乾燥していく過程で、試料が模擬皮膚から離れた時の水分率をもとめた。この方法は、試料の大きさ等まだ検討する点が多く、試料間の差の傾向はみられるが、肌離れ性の定量化まではいたらなかった。
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