本年度は、夏の発汗時の肌触りに関わる模擬皮膚と水分率を変化させた布間の摩擦特性と冬の乾燥した環境下での不快な刺激である布の乾燥にともなう静電気の発生とそれを除去する方法の一つとして、導電性縫い糸の効果的な使用方法について検討をおこなった。 肌触りを考える上で、ぬれた布が皮膚に密着する面積が少ない、あるいは密着して布がはやく皮膚から離れれば、不快な感覚は小さくなる。皮膚や衣服がぬれて互いに凝着し、その状態で皮膚と布がこすれると、我々は不快感を感じるばかりでなく、場合によっては皮膚がひっぱられ、痛みさえ生じる場合もある。そこで、皮膚と布の間で生じている水分による付着とすべり現象を模擬皮膚と布の間の摩擦特性の測定より解析した。その結果、起毛およびパイル構造の表面をもつ試料は、糸表面が完全にぬれてしまうと水分率にかかわらず、ほぼ一定の摩擦係数を示し、その値は、乾燥した状態ならびに漂準状態と比べ小さい。薄手ニットの場合、水分率が低い状態では布の表面形状が摩擦係数に及ぼす影響が大きいが、水分率が高くなり摩擦子である模擬皮膚との間で付着が生じると、液相の水による付着力が摩擦係数の変動に大きく関与している。これらのデータは布の肌離れ性ともかかわっている。布の肌離れ性を評価した結果、試料の水分率が100%付近になると模擬皮膚からの離脱がみられた。 冬の乾燥した室内で、衣服が擦られて生じる静電気は不快な刺激も生み出す。そこで、布の摩擦によって生じる帯電圧を測定し、それを有効に逃がすための導電性縫い糸の効果について検討をおこなった。試料はポリエステルとナイロン布の組み合わせを用い、十分乾燥させて用いた。その結果、導電性縫い糸を間隔をあけ、効果的に用いることで、静電気を除去することが可能であることがわかった。
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