平成10年度、11年度に分析した、小学生から大学生までの生活実態調査の結果を踏まえて、睡眠・覚醒リズムと日常生活の関連について、実験観察記録を試みた。これまで、中学生女子を被験者に予備的に実験した結果では、睡眠・覚醒リズムが乱れて、睡眠評価が低くなるに従って、日中の活動量(ActiTrackによる連続行動測定結果)が低下する傾向が認められ、睡眠の質と、覚醒時の行動が連動する事が示唆された。そこで本年度はさらに睡眠評価(効果)と日中の活動量の関連を検討するために、児童(6歳女、11歳男、12歳男)3名、大学生6名(20〜22歳、男2名、女3名)を被験者に各被験者7日間連続生活記録観察をおこなった。児童の延べ生活記録日数は23日で、大学生は43日であった。 その結果、次のような傾向が認められた。 (1)日常生活における「遊び」行動については、児童の場合延べ日数のうち「遊び」行動があった日は100%でそのうち、6割が屋内での遊びであった。大学生は、延べ日数のうち、「遊び」行動があった日が55%で、そのうち37%が屋外、8%が屋内の遊びであった。しかし、児童の屋外遊びは散歩、プール、野球など活発な動きを伴うものであるのに対し、大学生の屋外遊びは、買い物、おしゃべり、ドライブといった、社交的、あるいは精神的なリフレッシュのための遊びで、活動性は児童のように高くないことが特徴である。 (2)屋内遊びの大半を占めると予測したテレビ・ゲーム時間に関しては、大学生で延べ記録日数の72%が30分以内で、児童の延べ記録日数の63%が60分以上であった。 (3)就寝時刻は、児童のデータのうち67%は11前、11時台が14%、12時台も14%でやはり若干夜更かし傾向が認められる。大学生は、12時前が10%、12時台が18%、1時台が27%、2時台12%、3時以降33%と明らかに夜更かしとなっている。 (4)就寝時刻の遅れに伴って、大学生は寝付きが悪く、起床時刻も遅く、睡眠時間に大差がないにもかかわらず、起床時の睡眠評価が悪くなる(児童に悪い日は0%、大学生は42%)。これは睡眠・覚醒リズムの乱れが原因と考えられる。 (5)覚醒時に体温の変化を記録したところ、体温変動の大きい日ほど、睡眠の質が向上し、翌朝の睡眠評価が良くなる傾向が認められたことから、日中の活動量が夜間睡眠に影響を及ぼし、このことがさらに翌日の活動量に影響を及ぼすという、日常生活活動と睡眠の質の関連が明らかになってきた。
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