油汚れを水系洗浄で効果的に除去するための基本的情報を得るために、モデル洗浄系の構築を試みた。基質にはシリカガラス板を用い、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(APTES)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、パーフルオロエチルトリメトキシシラン(FETMS)の3種のシランカップリング剤を用いて表面処理を行った。基質に対する水の接触角をWilhelmy法により測定したところ、ガラス板をシランカップリング処理すると接触角の増大、すなわち疎水化が起こり、疎水化の程度はAPTES<MTES<FETMSであった。次に、作製した基質、油汚れのモデルとしてのアラキジン酸、並びに洗浄媒体としての水/エタノール混合液の表面自由エネルギーを接触角測定法により評価した。その結果、ガラス板をシランカップリング処理すると表面自由エネルギーの酸-塩基成分が減少し、減少の程度はAPTESで処理したガラスで最も小さく、FETMSで処理したガラスで最も大きかった。また、水にエタノールを加えると、酸-塩基成分が減少することがわかった。さらに、基質の界面動電位を水/エタノール混合液中で測定した結果、APTESで処理した基質は正に、それ以外の基質は負に帯電していることがわかった。また、エタノール濃度が増すと界面動電位の絶対値が減少する傾向が認められた。 基質上にアラキジン酸単分子膜をLangmuir-Blodgett(LB)法で累積してモデル洗浄系を作製し、水または水/エタノール混合液中で超音波洗浄を行った。その結果、エタノールの添加により汚れ除去が促進されることがわかった。また、アラキジン酸膜を累積したのち、紫外線を照射すると汚れの洗浄性が増大することが示唆された。
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