研究概要 |
洗浄媒体に水を用いて油汚れを効果的に除去するための基本的情報を得るために、モデル洗浄系を作製し、各種水溶液中で超音波洗浄を行った。まず、各種シランカップリング剤(γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、パーフルオロエチルトリメトキシシラン)でシリカガラス板に表面処理を行った結果、ぬれ性や表面自由エネルギーの異なる各種基質を得た(J.Adhesion Sci.Technol.,Vol.13,No.11,pp.1307-1320,(1998)並びにSecond International Symposium on Acid-Base Interactions:Relevance to Adhesion,Abstracts,p.32)。次に、油汚れのモデルとしてのアラキジン酸をLangmuir-Blodgett(LB)法で基質に付着させた。すなわち、水面上にアラキジン酸展開単分子膜を作製し、単分子膜を圧縮したときの表面圧測定、並びにブリュースターアングル顕微鏡(BAM)による観察を行った。固体凝縮膜が形成される条件で、垂直浸漬法で単分子膜を基質に累積した。累積膜の赤外反射吸収スペクトル並びにBAM像から、単分子膜は配向を保ったままY膜として移しとられ、基質上に均一なアラキジン酸LB膜が作製できたことが確認された。このモデル系を用いて水溶液中で超音波洗浄を行い、洗浄前後の基質の赤外反射吸収スペクトルから洗浄性を評価した。洗浄率はアニオン界面活性剤SDSやエタノールの添加により増大する傾向を示した。SDSやエタノールの存在下で温度の影響を調べたところ、温度の増加により洗浄速度が著しく増大し、80℃で完全に除去できた。未処理ガラスに較べ、シランカップリング処理を行うとLB膜の洗浄性が減少し、処理剤の種類によって洗浄率は異なる値を示した。この結果は基質の表面自由エネルギーと界面動電位により説明できた(23rd World Congress and Exhibition of the lnternational Society for Fat Research,Abstracts,p.78)。
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