太陽熱エネルギー利用システム住宅の居住者を対象にした聞き取り調査と夏季における温熱環境実測調査および夏季と冬季における実験住宅での被験者を使った温熱環境評価実験を行った。 協力が得られたシステム住宅居住者に対し、住宅およびシステムの基本的条件、システム以外の冷暖房器具の使用状況、温熱的満足度等について聞き取り調査を行った。システム導入前の住宅に比較して、夏季は住宅の高断熱・高気密性と室内空気循環の良さにより、耐え難い室温上昇はなく、冷房機器を利用しても運転効率がよいとの評価が得られた。冬季はシステムに組み込まれた補助暖房よりも従来からの開放型暖房器具を利用しているケースが目立った。その理由として経済性とエネルギー消費の点が挙げられていた。中間期においては、住宅の断熱性の良さと太陽熱エネルギー利用の恩恵に浴し、満足感が高かった。調査全般を通し、設備に投資をしても、自然エネルギーを利用して生活している実感が居住者の満足感をもたらしていることが明らかになった。 システムを導入している居住住宅を対象にした温熱環境の実測や実験住宅での温熱環境評価実験により以下のような結果が得られた。夏季における夜間冷却の効果はあまり期待できず、むしろ高断熱・高気密により室温上昇が抑えられていること、また冬季における晴天日の蓄熱効果は期待でき、室内空気循環の良さと床暖房方式により室温の上下温度差および室間温度差の少なさにより快適感が高いことがわかった。このようにシステム導入住宅での温熱環境は改善が見られたが、高気密・高断熱住宅であるにもかかわらず、夏季には通風を、冬季には開放型暖房器具を利用するなど、その住まい方には再考の余地がある。今後さらにデータ収集と分析を続け、住まい方も含め太陽熱エネルギー利用システム住宅における温熱的環境評価の確立を目指したい。
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