太陽熱エネルギー利用住宅のうち空気集熱式は、高断熱高気密な構造であるために、簡単なシステムながら暖房の省エネルギー効果が期待でき、ランニングコストも低廉であることなどから、近年その普及が見られる。 本年度は、昨年度の居住者への聞き取り調査において春先の居住性が評価されていたことから、特にこの時期に着目し、冬季から春季にかけて温熱環境実験を行い、人体への温熱的影響について明らかにした。 京都市のシステム利用実験住宅において、平成11年2月上旬〜4月上旬に外気および各室温湿度、主要室の垂直温度分布、床下温湿度、空気循環吹出口温度、日射量等の実測を行うとともに、青年女性被験者の皮膚温測定、行動記録、温熱的な体感申告を採取し、これまでに行なった冬季結果とあわせて居住者の生理・心理反応について考察を行った。その結果、2月上旬の実験日は外気温が-1.7〜11.8℃であり、日中のシステム稼動時のみの屋内主要室平均気温は21.3℃で、システムが稼動していない時は床下に蓄熱する補助暖房や室内の個別暖房を行なわないと温熱的快適感は得られなかった。これが、3月中旬になると実験日の外気温は9.2〜18.6℃となり、システム稼動時の主要室平均気温は27.7℃まで上昇した。12月・1月の冬季に比べ、2月は早朝の補助暖房と日中の日射で温熱的快適性が得られ、3月になればほとんどシステム以外の暖房はなくとも温熱的快適性は得られるということが明らかとなった。 これに加え、昨年度行った研究成果をもとにシステム住宅居住の特徴をまとめると、この住宅における温熱環境の満足度は高いが、高気密・高断熱住宅であるにもかかわらず、夏季には日射を招く住まい方や、冬季には開放型暖房器具を利用するなどの問題点が見られ、これら住宅の性能に見合った住まい方の必要性が示唆された。
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