研究概要 |
本研究は,駅型保育所が顕在化させた新しい保育ニーズについて明らかにするとともに、今後の保育所の展開方向について考察することを目的としている。平成9年度には、予備的調査として、駅型保育所4ケ所について経営者へのヒアリング調査、および3ケ所について利用者調査を実施した。平成10年度には、引き続き駅型保育所の経営者へのヒアリング調査を継続するとともに、駅型保育所近くに立地する認可保育所(奈良市学園南保育所、鶴舞保育所)において、ヒアリングおよび利用者調査を実施した。駅型保育所利用者(回答数60人,有効回収率70%、以下[駅型])と認可保育所利用者(回答数183人,有効回収数65%、以下[認可)の比較によって,結果の概要をまとめると,次のとおりである。1.[駅型]では3歳未満の低年齢児が大部分である。2.[認可]の母親の職業は公務員が多いが,[駅型]では企業勤務が多く、就労条件が相対的に厳しい。3.[駅型]では通勤途中に母親が送迎するものが大部分であり、住宅近くにある認可保育所に比べて、ほかの家族の送迎が少ない。家事・育児全般について、夫や同居・別居の親からの支援を受けるものが少ない。4.駅型保育所の選択理由は、長時間保育、駅に近い、保母の対応が良い、保育所経営に実績がある、施設・設備がよいなどである。保育所に対する満足度は、立地や保育時間を除くと[認可]に比べて[駅型]のほうが低い。5.駅型保育所を利用している理由は認可保育所に入れない、保育時間が合わない、ベビーホテルより質が良いなどである。6.プレナーサリー的に利用している専業主婦、育児に自信を失った専業主婦、母親が病気・出産などで、緊急に入所先を探した事例、幼稚園との二重保育など多様な利用事例がみられた。以上のことから、現在の認可保育所が共働き世帯の保育ニーズに十分応えていないこと、保育ニーズが多様化していることなどが明らかになった。
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