本研究では、駅型保育所が顕在化させた新しい保育ニーズについて明らかにし、今後の保育所の発展方向について考察する事を目的としている。これまでの調査研究では、従来の保育所では対応していなかったような新しい保育ニーズに駅型保育所が応えていることを明らかにした。平成12年度には、育児関連の共用施設・サービスを付設した集合住宅に着目し、居住者調査を実施した。調査対象者は近畿圏にある7つの分譲マンション居住者のうち、就学前児をもつ世帯または結婚後5年以内の世帯の主婦1076名であり、有効回収数は600票(有効回収率55.8%)である。調査対象としたマンションには、無認可保育所(シッター常駐)、託児室(シッター非常駐)、キッズルーム(屋内遊び場)のうちいくつかが付設されている。調査の結果、無認可保育所では、駅型保育所と同様、低年齢児保育や延長保育などの点で認可保育所のサービスでは不十分だと思われる共働き世帯の利用だけでなく、専業主婦の利用もみられた。また、全体的な評価としては、(1)集合住宅内に育児支援関連の共用施設やサービスがあることへの安心感や利便性への評価は高い、(2)居住者のニーズがあるにもかかわらず託児室での託児利用は抑制されている、(3)利用の手続き、室内仕様など利用者にとって使用しにくい点があることが明らかになった。(2)の要因としては、(3)だけでなく、利用料金が高いこと、居住者が施設・サービス内容についての情報を持っていないことが指摘された。集合住宅に付設する育児支援施設は、その利用を通して良好な近隣関係を形成するきっかけとなりうる効果も一部ではみられ、保育施設の一形態としての存在意義が明らかになった。
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