身体を圧迫することによって血流障害、心拍出量の低下、発汗や唾液分泌の抑制、心臓交感神経活動の抑制の報告がある反面、ノルエピネフリンが増加するという交感神経活動の増加を示す報告もあり、与圧による自律神経系の亢進及び抑制に関しては一致した見解が得られていない。 本研究の目的は身体を圧迫する圧力の程度によって自律神経や中枢神経の活動は亢進あるいは抑制されるのかを検討することである。その結果以下のような結果を得た。副交感神経の指標であるVHPは、圧力が5mmHgまでは圧力増加に伴い活動が低下し続け、5mmHgから16mmHgは一定の低い状態になり、16mmHg以上では増加し続けた。足先の皮膚温は圧迫した時上昇傾向にあり、深部体温は6mmHgから10mmHgまでの値は非圧力時より有意に低下した。特に10mmHgでは副交感神経、心臓交感神経、血管交感神経ともに活動が低下した。しかし、圧刺激の影響は交感神経と副交感神経では異なり、交感神経の方がより弱い圧で抑制され、圧が大きい場合より亢進すると考えられる。脳波も10mmHgで圧迫した場合には徐波化が生じていた。これらの結果から圧力の程度によって交感神経、副交感神経及び中枢神経の活動は異なることが示された。
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