研究概要 |
従来,染料分子に撥水・撥油性を発現させる官能基としてフルオロアルキル基を導入することは容易でなくほとんど報告されていなかった。本研究では,(1)各種のperfluorolakanoyl peroxideとアニリン誘導体との反応,ならびに,(2)perfluoroalkyl iodideとアニリン誘導体とのカップリング反応により新規なフルオロアルキル基含有アニリン類を合成し,ジアゾ化カップリング反応を行い,染料分子の芳香族環上にフルオロアルキル基を導入した直接ならびに酸性染料を新規に合成した。本年度は,酸性染料を選びナイロンの撥水染色について,表面自由エネルギー(接触角測定), ESCA表面分析等の界面化学的立場から詳細に検討し,染色と同時に撥水・撥油の表面機能を付与するという新たな撥水染色システムの開発について基礎的に検討した。 フルオロアルキル基(R_f)含有酸性染料による染色がナイロンの撥水性に及ぼす影響について調べた結果,同じ染着量においては,水の接触角はR_f=CF_3<C_3F_7<<C_8F_<17>【approximately equal】C_6F_<13>の順序で増大した。後の2つにおいては,ナイロン表面は明らかに撥水性(接触角>90゚)に染色できた。ESCA測定を基に,N_<es>に対するF_<es>ピークの面積比を表面フッ素濃度の新しい尺度として採用して,表面フルオロアルキル基量を求め、表面の化学的改質の定量化を行ったところ,このF_<es>/N_<es>面積比は水の接触角と高い相関にあった。フルオロアルキル基の違いにより見られた撥水性の差は,染料のバルクへの拡散のしやすさの違いにより説明されることが明らかになった。しかし,これは表面染色とも考えられ,この点についてさらに検討する予定である。
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