研究概要 |
前年度までの成果を踏まえ,さらに研究を深化・発展させるために,毎年調査項目,隔年調査項目に加え,住民の意識・行動・生活価値観,伝統・習慣など比較的緩慢に変容しする項目に関して,平成12年5月および10月に現地調査(当該村の住民に対する意識調査,聞取りおよび観察調査,公共および大学図書館における文献調査等)をおこなった.得られたデータを統計的解析,およびエスノグラフィカルな方法で分析し,諸要因間の相互作用とダイナミズムの解明を試みた. 電化を契機にテレビや外部からもたらされる大量の生活情報の流入は高収入欲求を昂進させた.稼得機会に対し手段的・直接的関係の強い意識(例えば経済向上,進学指向など)や行動(例えば経済情報を住民自ら探索すること)などについて大幅な変化が認められた.また,村人の新たな行動を媒介として生活価値観や伝統・習慣(例えば生活時間,食生活の実態など)が変化しつつあった.さらに,当該村の全住民の異動状況分析によると,都会への出稼ぎや進学によって家族が絶えず出入りする家庭が最近急増し,さらに分家や家族全員が都会や他村へ転出するといった,家族関係・構造の流動化現象が加速している.そして,従来,情報を一手に握っていた村長や一部の権力者の地位低落など共同体の権力構造にも大きな変化が認められた. これらの研究成果について情報文化学会誌(7巻1号),国立コンケン大学(平成12年8月24-26日開催)およびチェンマイ初等教育事務所(平成12年10月27日開催)主催のシンポジウムで発表した。
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