年次計画の初年度として、本研究は、空気汚染物質中のホルムアルデヒドに着目した。受動型サンプラーを用いて、高気密化したと言われる室内環境での多数の個所で測定を行うことを特徴としている。受動型サンプラーは、従来の吸引ポンプを用いるアクティブ・サンプラーと異なり、排気や騒音を伴わない。かつ、単価としては、比較的廉価である。 受動型サンプラーを東京周辺の70個所、室内外に一定の時間暴露し、ホルムアルデヒド濃度を測定した。試験布を室内環境、タンス内および暴露チャンバー内に懸架して、所定時間ごとに取り出した。試験布にはJIS添布白布の綿、羊毛、絹、ナイロン、ポリエステルを用いた。ホルムアルデヒドの分析は、AHMT法によった。気相中のホルムアルデヒドの濃度は、柴田科学製パッシブサンプラーによって測定した。 その結果、東京周辺の70個所の、室内環境におけるホルムアルデヒド濃度は、10〜180ppbの範囲にあることが判明した。さらには、夏期における濃度が、秋冬期に比較して明瞭に高くなる傾向が認められた。ホルムアルデヒドの発生における温度依存性を確認できた。一方、布帛へのホルムアルデヒド付着については、環境条件として、4オーダー異なる濃度のホルムアルデヒドが存在する3種類を用いた。本研究では、評価パラメータとして単なる暴露の経過時間を用いるのではなく、ホルムアルデヒド濃度と暴露時間との積をドース量として用いることに着眼した。異なる濃度であっても前述のドース量として整理すると5種類の繊維いずれにおいても、それぞれ、同一の特性曲線上にのることが認められた。 布単位重量当りの付着量の順位は羊毛>絹>綿>ナイロン>ポリエステルの順で多量となることを認めた。これは、繊維のリゲインでの序列と一致し、ホルムアルデヒドの吸収が、繊維表面よりも繊維内部での作用が大きいことが示唆された。
|