研究概要 |
本研究は、室内環境中の空気質に着目し、省エネルギーに留意した建築設計に起因する居住空間の気密性向上によりもたらされる環境条件の現状について把握することに主眼をおいている。健康障害の要因に関わるホルムアルデヒド、二酸化窒素、アンモニアおよび真菌の動態を、受動型サンプラーを用いて、多数の個所で測定を行った。 東京および周辺の一般家庭における居住環境での濃度分布の解明を目的として100家庭近くの居間での測定を季節を分けて実施した。その結果、ホルムアルデヒドは高温多湿の夏期において高く、また、新築ないしリフォーム3年程度の期間で高いことが認められた。全体としては、厚生省指針値80ppbより低い範囲にあった。呼吸系疾患の要因と言われるNO_2濃度は、ガスストーブあるいは石油ファンヒータなどの開放型暖房器具の使用により極めて高い濃度となることが明らかとなった。こうした場合のNO_2濃度は、環境基準の40ppbを超過し4〜6倍に達していることも稀ではないことが判明した。 また、繊維材料へのNO_2由来成分の付着量は化学的組成に影響されることが判明し、羊毛、絹およびナイロンで高く、また、亜硝酸イオンの硝酸イオンに対する比率は,2〜8と化学量論的比率よりもはるかに高いことが認められた。さらに、アンモニアは、室内環境中の濃度は屋外よりも高い傾向があり、特にペットの存在が高濃度要因と認められた。夏期に高く、気温との関連が伺われた。一方、真菌は、夏期に高く、乾燥状態で低温の冬期には、低い濃度となることが明らかとなった。CladosporiumおよびPenicilliumが各家庭で見られる主要な真菌であることが判明した。 以上の本研究で明かになった環境要因を充分考慮することは、生活環境を快適なレベルに維持するために不可欠であると結論される。
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