研究概要 |
1. 産院の新生児室や保育園の低年齢児保育の現場で最も多く観察されるのは,母親や看護婦,または,保母が乳幼児を抱き上げる動作と一定時間抱き続ける運搬姿勢である。そこで,本年度は乳児の抱き上げ方と抱っこの姿勢の時間的変容に焦点をあて,実験的観察を行った。被験者は女子大学生であり,実験にはダミーを用いた。 2. ビデオカメラにより6ヶ月児ダミー(体重7.5kg)を抱き上げた時点から5分間の姿勢変化を記録した。抱き上げた姿勢は被験者とダミーの顔が向き合う対面型とダミーの側面が接する側面型の抱き方が多かった。対面型の方が側面型よりもダミーを抱き直す動作が少なく,長く抱き続けるのに適した抱き方であることが分かった。 3. ダミーを抱きかえる動作は抱き上げてから3分経過し,4分に達するまでの間で最も多かった。抱きかえはダミーの位置が下がって抱きにくくなったり,肩や腕などに苦痛を感じるために起こったものと考えられる。 4. ビデオカメラにより観察された被験者の動きに関しては,最もよく動いた部分は顔(とくに目)であり,次に手であった。下肢の動きはあまり見られなかった。ダミーの顔を見る,身体を軽くたたく,揺さぶるといった動作はよく観察され,ダミーを用いた実験ではあったが,被験者の殆どに乳児をあやす動作が観察された。 5. ビデオではダミーを抱き続ける姿勢で下肢の動きがあまり観察されなかったため,(1)直立姿勢,(2)新生児ダミー(体重3.0kg)を抱く姿勢,(3)6ヶ月児ダミー(体重7.5kg)を抱く姿勢,についてそれぞれ3分間,左右下腿の筋電図記録をとり,比較を行った。抱いているダミーの重量が大きくなると時間経過とともに左右の踏みかえ動作が表れる傾向にあった。しかし,定量化するためにはより多くの事例で検証することが今後の課題である。
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