研究概要 |
乳幼児のいる家庭や乳幼児保育の現場だけでなく,子ども連れの外出などで,最も頻繁に行われる乳幼児運搬法は抱っこである。そこで,本年度も昨年度に引き続き,抱っこについての実験を行うとともに,これまでに得られたデータの分析を行った。主要な研究実績は,以下の3点である。 (1)利き側からみた乳児抱き上げ動作の特徴について:女子大学生37名を被験者として大小2体のベビーダミーを抱き上げる動作を行わせ,ビデオの動作記録により,抱き上げる側とダミーの頭部の位置との関係について分析を行った。その結果,ダミーの頭部と上体の位置は,抱く人の利き側よりも、ダミーを左右どちらか側から抱き上げるかによって決まる傾向にあることが明らかになった。 (2)抱っこの姿勢の履き物による差異について:女子大学生12名を被験者とし,乳幼児運搬具なしにベビーダミー(66cm,7.5kg)を3分間抱かせる実験を行った。履き物としてスニーカーと中ヒールの靴を選び,履き物によって抱っこの姿勢にどのような差異が現れるかを写真資料から分析した。その結果,頸関節角度に有意差が現れ(p<0.05),スニーカーよりも註ヒールを履いたときに,抱く人の頭部はやや挙上することが明らかになった。なお,腰関節角度に関しては履き物による差は現れなかった。 (3)抱っこの姿勢の時間的変容について:筋電図とビデオによる映像記録を上記(2)の実験と同時に収録し,抱っこの姿勢の時間的変容に関して分析を行った。被験者12名の3分間の姿勢の変化には,よく動く型とあまり動かない型の2つがあり,よく動く型では,ダミーを持ち上げて抱く位置を頻繁に調整する動きと,ダミーの背中や腰に優しく手で触れるような上肢の動作が主に観察された。
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