研究概要 |
介護保険制度がこれまでの家政を中心とした「生活再生プログラム」にどのような影響を与えるかについて,高齢生活保護世帯のホームヘルプ利用者を対象に,要介護状態の把握と「自立」層への支援の必要性を,担当ケースワーカー,ホームヘルパー,在宅介護支援センター職員等の判断をもとに評価を行った.自立認定が予想される世帯に対しての継続した生活支援の必要が明確になったとともに,最終的な認定結果では,自立と想定されていた層も含めて,多くの世帯が要支援あるいは要介護1と判定され,結果的には介護保険の制度によって家政上の援助が実施されることになる.ただし,劣悪化した公営住宅の上層階に居住する場合においては,訪問系のホームヘルプサービスによる家政上の援助のみでは,閉じこもり傾向にあることが判明し,地域社会との関わりを作り出すサービスの創出とその利用の促進が新たなケースワーカーの生活再生上の課題であることが指摘できる. 居住をめぐる「生活再生プログラム」として,島団地再生事業の第5期入居予定者を対象としたワークショップを継続的に行い,参与観察を通じた評価を試み,あわせて入居予定者の生活実態調査を実施した.また,第1期から第5期にかけて同様ワークショップと生活実態調査を蓄積しており,それを総括的に分析し直す作業を行っている.入居回数を重ねるごとに,生活再生を目指すプログラムに適合するケースが相対的に減少する傾向にあり,本再生事業の計画についての見直しが必要となってきている.また,既存の初期の入居層においても,その後の生活上の事故によって,想定されている居住をめぐる「生活再生プログラム」が有効に機能しない場合も生じていることが判明している.
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