阪神大震災により住環境に大きな被害を受けた兵庫県下に在住している高齢者の震災後の生活環境の実態を食生活に中心をしぼって調査し、震災前(平成6年度)に行った同様の調査結果と比較することにより、震災後、これらがどのように変化したかについて検討し、高齢者の食生活の自立に必要な条件及び疎外要因などの抽出を行うことを目的として研究を行った。 調査対象として兵庫県西宮市及びその近隣の市の生活協同組合コープこうべが主催する高齢者を対象とした「コープふれあい食事の会」会員を選び、食事の会が開催される時に会場に出かけてアンケート聞き取り調査を行った。調査期間は1998年10月下旬から12月中旬、調査用紙の配布数317票、回収数304票、有効回収率95.9%であった。 震災により被害を受けた人は約8割に上り、そのうちで引っ越しをした人は約3割を占めている。引越し後の住環境は必ずしも改善されていないが、住居内の台所は段差、スペース、湿気収納、コンセントの数等においてやや向上している。しかし、実際の台所作業時によく使う流し台まわりの作業台の使い勝手の評価が悪い。食事の満足度、食生活に関わる家事作業、食事づくりの負担度などにおいては、震災前後の変化は明瞭には表われていないが、お惣菜の利用割合が増えた、簡単な料理で済ませるようになった、という回答が震災前に比べて多くみられた。 以上の結果から、震災を経験した高齢者は生活意識の面で大きな変化が見られ、それが日常生活の上にさまざまな現象として表われていることから、今後、生活自立に向けて環境改善の重要性が示唆された。
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