高齢者ができるだけ自己の持てる能力を維持し、自立したが送れるようにするために、昨年度の調査研究結果から導き出された特徴を踏まえ、(1)高齢者の日常生活行動における活動量を連続記録しその特徴を把握すると共に、(2)家事作業中の生理的反応を測定し、設備の改善への提案を行った。 研究1では10名の高齢被験者(平均年令76.7歳)及び若年者6名(女子大学生)にAMI社製腕時計型活動記録計を装着させて48時間の生活行動を連続記録し、行動内容別に活動量を算出した。その結果、高齢被験者のうち9名が女性であったことから48時間の総活動量を左右する主要因は家事活動、年令、同居人数などであり、同居人数の減少に伴い活動量が増加する傾向が認められた。また睡眠時間と外出行動との間にも高い関連性(逆相関)が認められた。これらの結果から、長年月行って来た家事作業は高齢者の身体機能維持のために有用であり、適切な設備や援助機器の導入により負担を軽減をはかる必要性が示唆された。 研究2では高齢者が家事活動を遂行しやすい生活環境を提案するための基礎的データを得るために、日常よく行われる作業で負担の大きい階段昇降、掃除機操作、布団の上げ下ろし、作業台での移動作業などについて生体負担(心拍数、血圧など)を測定した。その結果、高齢者は若年者に較べて心拍数よりも脈圧の増加により作業負担に対応させ、作業後の回復期間も3分間では十分ではなく、循環機能の低下が顕著に認められた。
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