環境に負荷をかけない洗浄方法は洗剤成分、洗濯機、繊維の加工など様々な視点からのアプローチがある。本研究は洗浄よる環境の負荷を最小限に止めるための手法として、洗剤のビルダー成分に着目し検討を行うものである。本研究を進めるにあたり、平成10年度は天然高分子に水溶性、生分解性などの機能とビルダーとしての性能を付与するための基本的な検討として、まず、既存の水溶性高分子、各種界面活性剤、有機溶剤等を用いて各種汚染布に対する洗浄効果を調べた。 (1) 水溶性高分子と界面活性剤の混合系での洗浄作用: 水溶性高分子として、カルボン酸タイプ、スルホン酸タイプ、通常の非極性タイプの変性ポリビニルアルコールを調製し、それらと各種界面活性剤とを混合した系で、油化学会指定の人工汚染布を用いて洗浄力試験を行った。その結果、LASとの組み合わせよりも、石けんと非極性のポリビニルアルコールとの組み合わせおよびα-スルホ脂肪酸系界面活性剤とスルホン型のポリビニルアルコールとの組み合わせが優れた洗浄性を示すことがわかった。 (2) 農薬の除去性に及ぼす界面活性剤の影響: 衣類に付着した汚れのうち、除去しにくくかつ有害な物質である農薬を取り挙げ、衣類から完全に除去できる安全な除去方法について検討した。今回はまず、各繊維に付着する微量農薬の定量方法を検討し、その方法を用いて基本的な挙動である各種界面活性剤や高分子ビルダーによる洗浄性を調べた。 平成11年度は、酸化鉄粒子や農薬の除去機構を解析するため、繊維表面の形状や洗浄剤溶液の性質が汚れ物質の吸脱着にどのような影響をおよぼすかについて検討する予定である。
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