前年度の住宅雑誌の分析より、畳空間の新しい空間構成の特徴が明らかになったが、本年度はまずどのような和室が求められているかを探るとともに今後の和室のあり方を考えることを目的として、和室の実態と意識に関する調査を行った。また空間構成の異なる和室の評価実験を学生と主婦を対象に行い評価特性の比較を行なうとともに、学生を対象に色彩を中心とした視覚的効果について検討を行った。 和室の実態と意識に関する調査より以下のことが明らかになった。築年数の新しい住宅ほど和室数は減少しており洋室化の進み和室の減る現状が見られる。年齢の若い層ほど、築年数の浅い住宅和室の少ない住宅に居住しており、洋室志向が強い。これらのことから、若年層は和室を近なものとして捉えておらず、和室数の減少、和室で過ごす時間の減少が関係していると考えられる。中間層・高齢者層は和室で過ごしてきた経験から今後も使用していきたいと考えている。これからの和室の希望として、伝統的な和室は格式性を評価してハレの空間としての「客間」などに求められ、現代的な和室は実用性・利便性を期待して日常に使用する「居間」などに求められている。都市部での住宅の狭小化と相まって現代的な和室、実用的な和室を求める傾向は強くなっている。 色彩を中心とした視覚的効果の実験より、以下のことが明らかになった。因子分析の結果、快適感因子、重厚感因子、すっきり感因子、暖かさ因子の4因子が析出された。そして工法については真壁は大壁より心地よさが得られやすく、大壁はすっきりした雰囲気になりやすいということが、また各要因の色彩については壁や襖の色彩に関わらず線材に黒を用いることにより空間の重厚感が増す。さらに襖の明度を線材と同じ、もしくは線材より高くすることによって快適感が得られやすく、線材が他の要因よりも明度が高くなると快適感は得られにくい。
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