本研究では、少なくなりつつある和室の室内構成にも変化が認められ様々な現代和風空間が出現していることから、居住性評価に及ぼす要因分析を通して「伝統的空間としての和室の新しい空間構成」のあり方を明らかにしようとしている。 まず、平成10年度は、和室の空間構成要素がどのように変化しつつあるのかを住宅雑誌に掲載されている畳空間を中心に分析を行い明らかにした。また、畳空間に対する意味構造、志向を明らかにするべく、変化の大きい内部意匠を含む畳空間(和室)を30例選定しそれらについて大学生にSemantic Differential Methodにより評価をさせた。平成11年度は、どのような和室が求められているのかを探るとともに今後の和室のあり方を考えることを目的として、和室の実態と意識に関する調査を関西地区で行うとともに、空間構成の異なる和室の評価実験、ならびに色彩を中心とした視覚的効果について検討を行った。さらに、平成12年度には、伝統文化も含め様々な生活環境の違いが見られる関東地区(都心部とその近郊都市)で和室に対する意識調査を行い、関西地区との比較考察するとともに、照明諸要因の和室における視覚的効果について検討した。 その結果、和室は若い世代では実生活から欠け離れた存在となってきており、関東地区の方がその傾向は強い。今後住宅に求められる和室は、精神の拠りどころとしての和室、利便性を追及した和室であり、個々の暮らしにあった和室であり、今後ますます和室の内部意匠の省略化、簡略化は進むと考えられる。また、内部意匠の省略された様々な現代和室では、ダウンライトやシーリングライトなど種々の照明方式が用いられるようになり、照明も和室において空間構成要素の1つとして重要な役割を担うようになってきている。照明諸要因は活動性因子および価値因子に影響が大きく、活動性については色温度の高い昼白色光源の影響が強く、また実用性を重視するなら昼白色が高く評価されている。また高照度の方が、都会的、日常的、実用的に感じられていることが認められたが、高ければ高い程よいというわけではない。
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