野菜のテクスチャーはその食味を特徴づける重要な因子である。根菜類は高圧処理および処理後の放置によりその後の加熱による軟化が抑制され、その機構はペクチンの変化のみでは説明できないことがこれまでの研究成果より示唆された。本研究ではダイコンを試料として高圧処理および処理後の放置による硬化の機構を細胞壁多糖類および金属イオンの役割に着目して解明することを目的とした。高圧処理およびお処理後の放置により放置時間に依存して硬化の進行が認められ、その間に組織のpHの低下、水可溶性タンパク質の減少およびアルカリ不溶タンパク質の増加がみられた。細胞壁多糖類を分画定量した結果、ペクチンとセルロースの量的変化はほとんどみられなかったが、水素結合の弱いヘミセルロースIがわずかに減少し、水素結合の強いヘミセルロースIIがわずかに増加した。カルシウムイオン濃度はペクチン中で増加する一方、ヘミセルロース中では減少した。カリウムイオン濃度はヘミセルロースIIで減少した。マグネシウムイオンの約90%はペクチン中に存在し、高圧処理による変化はみられなかった。以上により、高圧処理およびその後の放置による根菜類の硬さの増大は細胞膜の機能性の低下に伴う金属イオンの移動によるペクチンエステラーゼの活性化とペクチンとカルシウムイオンの架橋結合の生成、タンパク質の変性に伴う不溶化とヘミセルロースの緻密化などの構造変化が組合わさって起こると推察された。
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