遺伝子組換え食品が、わが国でも認可され始めたが、消費者の漠然たる不安感をぬぐいさるのは困難である。この不安感の一つに予期せぬ未知タンパク質の混入があげられる。ここでは、組換えタバコおよびリンゴを取り上げ、予期せぬ新たなタンパク質がどの程度できるかをコントロールの植物体と比較し、安全性に対する基礎的知見を提供することを目的とする。具体的には、抗生物質を選択マーカーとして、植物の遺伝子組換えに最もよく用いられているAgrobacterium法を用い、組換えタバコおよびリンゴシュートを複数作製する。そして、それらの組換え体とコントロールの再生植物体のタンパク質をSDS-PAGEで比べ、新たなタンパク質がどの程度出現するか、また、しないかを調べる。 一昨年度はまず複数の組換え植物体を作製し、安定して生育するカナマイシン耐性タバコおよびリンゴを数株得た。昨年度は、このタバコ組換え体からタンパク質を抽出し、SDS-PAGEで比較した。本年度は、同様にリンゴ組換え体も分析した。その結果、組換え体と非組換え体の間に、タンパク質の発現パターンの顕著な差は認められなかった。また、2次代謝産物に影響がないかを調べるため、溶媒抽出後、フェノール類の3次元HPLC分析も行った。その結果、クロマトパターンに変化はなく、新たな成分は現れなかった。
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