研究概要 |
天然の牡蠣殻を粉末に調製したカルシウム剤には,広範囲の菌やカビ,酵母にきわめて低濃度で増殖抑制効果が認められることから,本研究においてはそのメカニズムを明らかにし,カルシウム剤を抗菌剤・静菌剤として有効利用することを主眼にしている.短期間の浸漬で静菌・抗菌効果が得られるため,カルシウム剤は給食食材の野菜類の洗浄・殺菌に最適であると考えられる.そうした有効性を検証し、実用化を図ることを目的とする. 本年度は,一般生菌、大腸菌、乳酸菌など広範な菌やカビ、酵母の最小生育を阻止するカルシウム剤の濃度を標準寒天培地による希釈培養法ならびにメンブレンフィルター法を用いて決定した.その結果,0.05%〜0.10%(w/w)の濃度で供試を行ったすべての菌株,酵母株,黴株の生育を阻止した.さらに阻止要因を探るため,増殖させた大腸菌に0.05%〜0.10%になるようにカルシウム剤を添加し,菌体を遠沈させた.その上清は260nmの波長に吸収を持つことから,大腸菌膜の破壊により核酸が細胞外へ流出したものと考えられ,さらに電気泳動でゲノムDNAを確認した.次に0%〜0.20%のカルシウム剤存在下で大腸菌膜の形状変化を走査型電子顕微鏡で観察した.膜表面が大きく形状変化を起こす濃度とDNAの流出濃度並びに大腸菌の生育阻止濃度には明らかな相関がみられた.また,生食カット野菜(キャベツ,ニンジン,キュウリ)に応用したところ,0.1%のカルシウム剤に短時間浸漬することで明らかな菌数の低下が認められた.現在,カルシウム剤に種々のカット野菜を浸漬後保存し,抗菌効果を保ちつつ褐変化防止できうるカルシウム剤の濃度を決定している.
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