研究概要 |
天然の牡蠣殻を粉末に調製したカルシウム剤には,広範囲の菌やカビ、酵母にきわめて低濃度で増殖抑制効果があることが知られている.本研究では、電子顕微鏡による徴微形態的観察と平行して、電気泳動による成分分析を行うことにより、その静菌・抗菌メカニズムを明らかにしてきた。さらに生食カット野菜へ供試して,抗菌効果の得られるカルシウム剤の浸漬濃度並びに浸漬時間について検討した。今年度はカット野菜の微生物学的に良好な品質を維持する(カット野菜の品質保持指針による)ことは可能な状態でも、外見の劣化を引き起こす要因について考察した。 走査電子顕微鏡による解析の結果、野菜の切断面での破砕細胞からの離水及び養分による菌の増殖、酸化による変色、水分の蒸発によるしおれ等の影響が大きいと考えられた。カット野菜は野菜本来の生命活動は弱まっていることから、従来の野菜の鮮度保持で考えられていたように生命活動をできるだけ抑えるというのではなく、細胞レベルでの鮮度保持が必要であると結論した。 一般的な製造方法(一次、二次洗浄に次亜鉛素酸ナトリウムを用いた殺菌方法)で得られた種々のカット野菜とカルシウム剤処理のものとを比較検討した。カルシウム剤処理のキュウリ、カイワレ大根が特に外観評価も高く、変色が抑えられていた。また生化学的分析によりクロロフィル量の保持量が高いことが確かめられた。カルシウム剤は短期間の浸漬で静菌・抗菌効果を持つのに加えて、鮮度保持剤としても著しい効果が認められ、給食食材の野菜類の洗浄・殺菌に最適であると考えられる.
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