アミノカルボニル反応は食品の製造・保蔵・流通中の起こる褐変着色・着香現象と深く関わっており、味醂(みりん)などでは着色・濃色化は消費者に好まれない。 (1)アミノ酸・ペプチドのアミノカルボニル反応における反応性および生成する褐変色素の色調について、みりんモデル系(pH5.6)中で比較検討ところ、反応性はアミノ酸<ジペプチド<トリペプチドの順に高かった。C末端が同じジペプチドの反応性は、N末端アミノ酸残基の反応性に依存した。N末端アミノ酸が同じジペプチドの反応性もC末端アミノ酸残基の反応性に依存した。また、同じアミノ酸の組み合わせのジペプチドではC末端アミノ酸残基の反応性よりもN末端アミノ酸残基の反応性の方がより大きく影響した。同一重量濃度のグリシン、ジグリシン、トリグリシンの反応性は、モル数(N末端数)よりアミノ酸・ペプチド間の反応性の差に大きく影響された。各アミノ酸・ペプチドから生成する色素の色調も異なった。以上のことから、みりんの濃色化抑制のためには、ペプチドを反応性のより低いアミノ酸にまで酵素などで分解すること、および反応性の高いアミノ酸および暗い色調の色素を生成するアミノ酸を適当な方法で除去すること、が望ましい。 (2)みりん中の化学発光量は保蔵中に褐変に先だって増加し、加温、光照射下では発光量が多くなった。化学発光量はみりんの褐変化の予測に使用できる。 (3)グルコニ糖類の核酸(デオキシグアノシンーリン酸)とのアミノカルボニル反応における反応性は、アミノ酸に対する反応性傾向と同じであった。 以上、みりん保蔵条件下を中心にアミノカルボニル反応に関わる諸要因について明らかにできた。
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