本年度は、米のアスパラギン酸プロテアーゼであるオリザシンを効率よく精製し、かつ種子における所在を明らかにするために、オリザシンに対する特異性の高いペプチド抗体の作製を試みた。オリザシンは、米より数種類が分子クローニングによって見いだされている。そこで、そのうちのひとつオリザシン1の一次構造より、N末端およびC末端領域のアミノ酸13残基を含むのペプチドを各々合成し、ラビットに免疫してオリザシンに対する抗血清を得た(以下、N末抗体、C末抗体と表す)。得られた血清から、抗原ペプチドを結合させたアフィニティーカラムを用いて、オリザシン1に特異的なポリクローナル抗体を濃縮した。抗体価および特異性を検定するために、米からタンパク質を硫安分画により粗精製し、2種の抗体を、アルカリフォスファターゼ標識抗ラビットIgG抗体による酵素反応を用いて検出するウェスタン分析に供した。いずれの抗体もオリザシンタンパク質に特異的に反応した。抗体価はN末抗体の方が、C末抗体よりも高かったが、どちらもタンパク質の精製時に用いるのに十分なものであった。 次に、組織抗体染色を行った。完熟米種子を吸水し、30℃で発芽させ、4分割したのち10%のホルムアルデヒドを含む0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)で固定した。O.C.T.コンパウンドを用いて包埋し、液体窒素で凍結したのち、ミクロトームで10μmに切助しスライドグラスに固定して切片を得た。N末抗体を400分の1に希釈し、ラディシュパーオキシダーゼをもちいた発色法にて染色をした。その結果、オリザシンは主としてアリューロン層に多く存在していたが、胚乳部にも染色が確認されたことがら、オリザシンは種子中に広く分布している可能性が示唆された。
|