研究概要 |
コメの新規プロティナーゼ(オリザシン)は、アスパラギンギン酸プロティナーゼ(AP)の特異的阻害剤であるペプスタチンで阻害され、至適pHが3.OであるAPの一種である。オリザシンについてコメの貯蔵タンパク質に対する作用を調べたところ、グルテリンをよく水解したが、プロラミンには作用しないことがわかった。コメから抽出した粗酵素液は、スキムミルクに対して凝乳活性を有し、良好なゲルを生成した。オリザシンが凝乳酵素キモシンと類似の性質を持つことがわかったが、両者では一次構造に大きな違いがある。APに共通の活性中心近傍の配列はどちらも保存されていたが、オリザシンにはC-末端領域に巨大なインサーションが存在する。このインサーションの役割を解明するために、インサーションを欠失させたオリザシンを得、酵素活性に及ぼす影響を調べたところ、ヘモグロビンに対するプロテアーゼ活性は失われなかった。しかし、昨年度に作製したオリザシンのN-末端配列の抗体およびC-末端配列の抗体を用いて自己消化の過程を検討したところ、インサーションの有無によって自己消化の速度が異なることが示された。 次にオリザシンに存在するインサーションが、他の植物APにおいても存在するかを調べた。コメと異なる双子葉であり、食品として広く利用されている大豆に着目し、クローニングを行い2種のAPをコードすると思われるクローンSOYAP7a,SOYAP23dを得た。二つのクローンにはオリザシンと同様インサーションが存在し、インサーションが植物APの特徴の一つであることが示唆された。二種の大豆APは活性中心近傍のアミノ酸配列の相同性は高いが、互いに50%台の相同性を有するのみであった。
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