【目的】 健康食品として注目されているダッタンソバの摂取がII型糖尿病患者の血糖値を改善させたという報告があるが、その効果が十分に検証されているとはいえない。ヒトにおいては食事条件をコントロールすることが難しいため、本研究では食餌条件のコントロールが容易な動物実験により、糖尿病治療食としてのダッタンソバの有効性を検討した。 【方法】II型糖尿のモデルであるOLETFラットに、ダッタンソバ粉を20%含む実験食を8週間自由に摂取させた。対照食として、ダッタンソバ粉の代わりに日本産ソバ粉(普通ソバ粉)を使った食餌、ならびに普通ソバ粉にダッタンソバ粉相当量のルチンを加えた食餌の2種類を用いた。OLETFラットの対照として、LETOラットを用いた。実験食飼育前後に、経口糖負荷試験ならびにヘモグロビンA_<lc>の測定を行った。 【結果】 ダッタンソバ食を与えたOLETFラットの糖負荷1時間後の平均血糖値は、実験食開始前が356mg/100mlであったのに対し、実験終了時には432ml/100mlとさらに上昇した。ヘモグロビンA_<lc>は、実験食開始時の12.8%から17.6%へと有意に増加した。実験終了時のヘモグロビンA_<lc>%は、普通ソバ食群よりも有意に高く、ルチン添加食群はダッタンソバ食群と普通ソバ食群の中間的な値を示した。 【考察】本研究は、耐糖能ならびにヘモグロビンA_<lc>を指標として糖尿病治療効果を検討したものであるが、ダッタンソバならびにルチンにその効果を認めることはできなかった。本研究の結果は、OLETFラットにおける成績をそのままII型糖尿患者に適応できるかどうかの問題はあるものの、糖尿が発症してしまってからではその効果は期待できないことを示唆するものである。現在、糖尿病発症抑制効果や合併症阻止効果について検討中である。
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