初年度は、II型糖尿病のモデルであるOLETFラットにダッタンソバ粉を20%含む実験食を8週間自由に摂取させ、ダッタンソバの糖尿病治療効果を検討した。日本産ソバ粉(普通ソバ粉)ならびに普通ソバ粉にダッタンソバ粉相当量のルチンを加えた食餌を対照とし、経口糖負荷試験ならびにヘモグロビンA_<1C>を指標として解析した結果、普通ソバ粉に比べてダッタンソバあるいはルチンが有効であるという知見は得られなかった。 次年度は、ダッタンソバに加えて糖尿病患者用に開発されたダッタンソバ製品に用い、ソバ粉を含まない食餌を対照に、糖尿病発症抑制効果および合併症阻止効果について検討した。OLETFラットに、ソバ粉(普通ソバ粉とダッタンソバ粉の2種類)あるいは中国製ソバ粉製品(組成:ダッタンソバ54%、南瓜24%、黒大豆16%、山薬6%)を20%含む実験食を自由に与え、28週間飼育した。糖負荷試験の結果、いずれの食餌群においても20週齢を越えると顕著な耐糖能障害と高インスリン血症が認められた。ソバ粉を含まない食餌を与えた対照群ならびにダッタンソバ群の約半数のラットは、実験末期には体重が減少し高インスリン血症も消失した。普通ソバならびに中国製ソバ粉製品群には、そのような病態の悪化を示すラットはほとんど出現しなかった。ヘモグロビンA_<1C>%は病状の進行に伴って増加したが、ソバ粉食群のヘモグロビンA_<1C>%は対照群よりも低かった。ソバ粉食群の尿中アルブミン排泄量は対照群よりも低値であった。 以上の結果は、ソバ粉の摂取がNIDDMの発症抑制ならびに合併症進展阻止に有効であることを示す。その効果は、ルチン含量の少ない普通ソバ粉が最も有効であり、ルチンを多量に含むダッタンソバ粉の効果は顕著ではなく、ダッタンソバ粉よりもダッタンソバ粉製品の方が有効であった。そのため、ソバ粉の効果にはルチン以外の成分やそれらの量的なバランスが関係していることが示唆された。
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