本研究では、クルマエビにおけるオキシテトラサイクリンの残留特性を明らかにすることを目的とした。さらに、加熱調理が魚体内に残留する薬物に及ぼす影響を検討した。まず、高速液体クロマトグラフィー法によるクルマエビ組織におけるオキシテトラサイクリンの定量法を確立した。本分析法によるクルマエビ組織におけるOTCの回収率は、血リンパで92%、筋肉で88%、殻で87%であった。ついで、健康なクルマエビにオキシテトラサイクリンを強制経口投与(50mg/kg)して、その組織内濃度を求めた。投薬後、血リンパ及び筋肉におけるオキシテトラサイクリンは1-コンパートメントモデルに従って解析することができた。消失半減期は血リンパで44.7時間、筋肉で46.8時間であった。また、現在設定されている残留基準値(0.10ppm)以下になるのに要する時間は血リンパで9.9日、筋肉で9.3日と算出された。それらは定められている休薬期間である25日以内であった。しかし、硬組織の殻においてオキシテトラサイクリンは投薬後に明瞭な消失相が認められず、投薬後25日でも高濃度で検出された。一般にクルマエビの殻は不可食部として扱われ、厚生労働省の「残留有害物質モニタリング検査」では可食部のみを検査対象としている。したがって、休薬期間及び残留基準値の評価に不可食部の残留を考慮すべきか否かは今後の課題と考えられた。最後に、茹でる、焼く、揚げるの加熱調理による残留オキシテトラサイクリンの分解消失について検討した。その結果、筋肉中の残留オキシテトラサイクリンは50〜70%分解消失した。一方、殻では、その消失20〜30%にとどまり、硬組織における残留オキシテトラサイクリンは加熱調理に対して安定であることが認められた。
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