1.魚介類の脂質以外の成分の脂質代謝への影響に関する報告は見あたらない。本研究では、エビ、カキの脂質以外の成分(大部分たん白質)の脂質代謝への影響を検討した。 (1)エビの脂質以外の成分の影響 肝臓コレステロール(Chol)濃度を低下させるなど、脂質代謝改善作用を有し、その作用の強さは大豆たん白質よりやや弱いものであった。 (2)カキの脂質以外の成分の影響 カキは血清と肝臓Chol濃度をカゼインおよび大豆たん白質より低下させた。カキの脂質以外の成分は肝臓Chol濃度をカゼインや大豆たん白質より減少させた。カキの脂質低下作用はその脂質成分と脂質以外の成分によって発揮されており、その作用は大豆たん白質よりも強いことが観察された。また、カキのペプチド成分による影響の可能性が示唆された。 2.クロナマコは一般に食用とされず有効に利用されているとは言えない。本研究では、クロナマコの有効利用を図ることを目的として、ラットの脂質代謝への影響を検討した。 クロナマコは血清Chol濃度を低下させ、HDL-Chol濃度を上昇させ、肝臓Chol濃度を著しく低下させた。 クロナマコはChol低下作用を発現させることが明らかとなった。 これまでの一連の研究より、魚介類全般に脂質代謝改善作用がある可能性が示唆され、その作用がEPAやDHAなどの脂肪酸、難吸収ステロールのみならず、脂質以外の成分によっても発揮されることを初めて明らかにした。その発現の一部がペプチド成分による可能性があることから、精製したペプチドを単離することで有効に活用することができるものと思われる。
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