各種魚介類のコレステロール代謝に及ぼす影響を明らかにし、脂質改善作用のある魚介類について、その作用がどの成分により発揮されているのかを追究した。イカ、タコ、エビを摂取したラットおよびマウスで血清や肝臓コレステロールおよびトリグリセリド濃度が低下し、これら魚介類に脂質改善作用のあることが明らかとなった。この作用は、魚介類に含まれる脂質成分に起因していたが、魚介類の脱脂成分によっても発揮されたことから脂質以外の成分にも起因することが示唆された。イカの脂質以外の成分は、肝臓の脂肪合成酵素の活性を抑制したことから、脱脂イカ摂取による血清や肝臓トリグリセリド濃度の低下は脂質以外の成分により発現している可能性が示唆された。脱脂エビのコレステロール低下作用は、大豆たん白質のそれより弱いものであった。イカ、タコ、エビの脂質改善作用は、脂質成分のみならず脂質以外の成分による糞中へのステロイド排泄の増加にも起因していた。カキも血清および肝臓脂質濃度を低下させ、その作用はカキの脂質成分(n-3系多価不飽和脂肪酸、難吸収ステロール)および脂質以外の成分により発揮されており、その作用は大豆たん白質より強いことが明らかとなった。また、ナマコも脂質低下作用を有しており、肝臓コレステロール濃度の著しい低下が観察された。 このように、魚以外の魚介類にも脂質低下作用が認められ、魚介類の脂質成分のみならず脂質以外の成分も脂質代謝改善に関与していることが明らかとなった。脂質以外の成分はたん白質やペプチドなどが含まれ、多くの機能性を有している可能性があり、また食品への利用性や応用性が高い。本研究の結果は、我々の健康に対する魚介類への期待と有効性をさらに高めるものと思われる。
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