研究概要 |
骨粗鬆症モデル動物の骨量減少に対する植物性エストロゲンの効果 [目的]大豆中にはゲニステイン等のエストロゲン様の構造を持つイソフラボンが含まれており近年、骨密度との関係が注目されている。本研究では、大豆由来のイソフラボンであるゲニステインが骨、骨髄および生殖器でエストロゲン様作用を示すか否かを卵巣摘出マウスを用いて検討した。また、ゲニステインの骨芽細胞の増殖と分化に対する作用を検討した。 [方法](1)8週齢雌性マウスに偽手術(Sham)あるいは卵巣摘出手術(OVX)を施し、OXV群にゲニステイン(Gen;0.1〜0.7mg/day),17β-エストラジオール(E2;0.01〜0.1μg/day)を2週間皮下投与後、子宮重量を測定すると共に、脛骨より骨髄細胞を採取した。B細胞の表面抗原B220に対する単クローン抗体を用い、Flow cytome toryによりBリンパ球造血を解析した。(2)OVX群にGenあるいはE2を4週間皮下投与して大腿骨を採取し、DXA法により骨密度を測定した。また、mCTスキャンによる大腿骨の3次元解析を行った。(3)骨髄間質細胞(ST2)及び骨芽細胞(MC3T3-E1)の増殖と分化(オステオポンチン、コラーゲン、RANKL、OCIF mRNA)に対するGenの作用を検討した。 [結果](1)OVX後骨髄中のB220陽性のプレB細胞が選択的に増加したが、Gen(0.5mg/day)及びE2の投与によりShamレベルまで低下した。(2)OVXにより低下した子宮重量は、Gen(0.1〜0.7mg/day)を4週間皮下投与しても全く回復しなかった。E2の2週間の投与により子宮重量はShamレベルに回復した。(3)OVXにより大腿骨骨密度が低下したが、E2のみならずGenの投与により有意に回復した。一方μCTスキャンによる解析では大腿骨遠位端の海綿骨はOVXにより著しい骨梁の断絶と消失が認められたが、これらの変化はGenの投与によりShamレベルまで回復した。(4)Genは骨芽細胞の増殖と分化には影響しなかったが、活性型ビタミンDによるRANKLの発現を抑制した。 [結論]ゲニステインは、卵巣摘出骨粗鬆症マウスにおいて、子宮に全く作用することなく骨密度低下を抑制した。大豆イソフラボンは閉経後骨粗鬆症の予防に有効な栄養因子として重要視される。
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