本研究では、茶ポリフェノールの生体内における抗酸化性評価を、X線照射により酸化損傷を誘発する実験系において検討した。実験動物にX線を全身照射したとき、酸化損傷は骨髄では照射後直ちに惹起され、肝臓や血液では照射後2-4日遅れて惹起された。茶ポリフェノール(-300mg/kg体重)投与は、X線照射による抗酸化ビタミンの低下やDNA等の酸化損傷に対して全く影響しなかった。茶ポリフェノール投与そのものによってもDNA損傷などの有害な影響はなかった。X線照射後の血漿や肝臓では鉄濃度(総鉄、結合鉄)が増加したが、茶ポリフェノールはこの鉄濃度に対しても何ら影響しなかった。鉄キレーターであるデフェロキサミン投与では、骨髄DNAの酸化損傷が若干抑制できた。固相抽出法・電気化学検出器-HPLCによる茶ポリフェノールの簡便かつ高感度な定量方法を開発し、血漿ポリフェノールを測定したところ、茶ポリフェノールは投与後速やかに血液中から除去された。人に茶ポリフェノール(300mg)を投与した実験において、ガロイル基を持たないポリフェノール(EGCやEC)は速やかに抱合体に代謝され、ガロイル基を持つポリフェノール(EGCG、EGC)も投与2時間以降では抱合体に代謝されることを明らかにした。血漿鉄濃度・形態に対する茶ポリフェノール投与の影響は人の実験においても検出できなかった。以上の結果から、茶ポリフェノールは、投与後速やかに抱合体になり、体外に排泄されるため、本実験条件において明確な抗酸化性が検出できなかったと考えられた。従って、茶ポリフェノールの生体内における抗酸化性を期待するには、頻繁に茶ポリフェノールを摂取して血液や組織中濃度を維持する必要があると考えられる。
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