研究概要 |
本年度は,年輪年代のはっきりした現生の樹木試料である,木曽ヒノキ(樹齢は950年)について,年輪の分割整理,14C濃度測定のための試料調製操作を検討した.14C濃度測定は,最新型タンデトロン加速器質量分析計の準備が整わなかったので,限られた数の試料について旧型のタンデトロンを用いて測定し,Stuiver&Pearson(1993)の14C年代一年輪年代較正曲線と比較した.さらに,埋没樹木について,年輪年代測定がされている樹木試料を入手した. 木材から3cm角程度の角材を切り出し,ミクロトームで1年毎の年輪試料を切り出した.試料の量は100mgを目安とした.これから,超音波洗浄の物理的処理により固形の不純物を除去し,次に塩酸,水酸化ナトリウム,ジア塩素酸ナトリウム水溶液などを用いて化学処理により樹木中の安定な成分であるアルファセルロースを抽出した.アルファセルロースから,加速器質量分析計で分析するためのグラファイト作成は,既に確立された方法を用いた. 木曽ヒノキから分取された1年輪単位の試料のうち約20点について,試料調製処理を行ってグラファイトを作成し,旧型のタンデトロンを用いて14C年代測定を実施し,Stuiver&Pearson(1993)の14C年代一年輪年代較正曲線と比較した.旧型のタンデトロンを用いたため14C年代測定の誤差が大きいが,平均値では良く一致していることが分かった. 最新型タンデトロンは調整の第1段階のテストを完了した.現代の炭素について,(1)10分間の測定で0.6%の統計精度が得られる,(2)6個のターゲットを用いた14C/12C′比の再現性テストについて,0.2%以下のバラツキで14C/12C比が再現される,等が明らかとなった.2年度目は,最新型タンデトロンを用いて埋没樹木の14C年代測定を実施する.
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