研究概要 |
本研究の目的は,埋没樹木試料について,最新型タンデトロン加速器14C測定装置を用いて高精度の年代測定を行うことである.研究期間中に測定装置の故障が頻発したため,十分な試験は出来なかったが,(1)火山噴火に関連する埋没炭化材の30年分の連続した1年刻みの年輪試料,(2)湖底堆積物中有機態炭素試料,(3)木片試料多数,等を測定した.最新型タンデトロンでは,NBS標準体を用いて6回に及ぶテストの結果,再現性は±14〜±33年と得られ,高精度年代測定の可能性が示唆された.次に,国際原子力機関が提供している年代既知の試料を測定し,既知年代とほぼ誤差範囲で一致する年代測定結果を得た.埋没炭化材試料は,中国・北朝鮮国境に位置する白頭山の噴火によって埋没したものである.同噴火は10世紀始めで,西暦926年の渤海国の衰亡に大きな影響を与えたとされる.一方,福田(1999)による青森県小川原湖の湖底堆積物の縞状堆積物の解析から,西暦937-938年の噴火とされている.炭化材の37年輪を分割して,最外年輪から30年分の年輪を年代測定した.最外年輪は化学的な前処理でほとんどが失われ測定できなかった.2-3番目の年輪は9000yrBPを越える,また4番目の年輪も2000yrBPに近い古い14C年代を示した.恐らく,地中に埋没中の炭素汚染によると考えられる.最外年輪から5番目以降の試料はほぼ良好な年代値を示した.5-12番目の年輪の14C年代は,世界的に利用されている14C年代-暦年代較正曲線(Stuiver et al 1998)の西暦920-930,930-940年の2つの10年間の平均14C年代とよく一致した.この結果は,福田(1999)が推定した噴火時期と矛盾しない.多数の木片試料の14C年代測定テストでは,若い年代では±40〜±60年の誤差(1標準偏差)で測定出来ることがわかった。
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