福岡市育委員会、佐賀県教育委員会、大分県宇佐市教育委員会、佐賀県鳥栖市教育委員会の協力を得て、弥生時代から古墳時代の墳墓の発掘調査現場で赤色顔料のサンプリングを行い、採取方法および分析試料の作製をおこなった。特に、今年度は前年度までに行っている、鉱物の顕微鏡試料に準じたものを作成し可否を検討する作業のうち、エポキシ樹脂に埋め込み固化した試料を顕微鏡試料作製装置を使用して研磨しプレパラート試料とする作業のルーチン化について引き続き検討を重ねた。今年度は顕微鏡試料作製のための装置のうち、昨年度設置の研磨器についで切断機を設置したので前年度までよりは作業の効率が上がった。 前年度までに検討、開発した柱状サンプリング試料やブロック採取試料を包埋、固化し薄片試料とすることにより、墳墓床面の遺骸の腐朽や埋没に伴う時間的変化と思われる状況を詳細に観察することができた。今年度は、特に上記調査遺跡のうち宇佐市別府遺跡調査出土例において、胸部周辺の試料から、朱が極めて遺骸に直接的に施された可能性を物語る石灰花と朱の状況を観察することができた。 本研究は、各地教育委員会の協力を得て、墳墓発掘調査現場での赤色顔料試料採取とその整理方法および分析試料の作成方法のマニュアル化を目指すものであったが、3年間の調査研究により、遺骸に施す2種類の赤色顔料の在り方を十分把握するための試料採取・調整方法を確立する目途を得ることができた。
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