平成10年度は、大分県玖珠町陣ヶ台遺跡、福岡県苅田町岩屋古墳群にて試料採取、佐賀県鳥栖市安永田遺跡、兵庫県向山古墳群出土試料については各教育委員会より提供を受ける。各遺跡での赤色顔料出土状況に見合うサンプリング方法、分析方法の検討、遺骸に施す2種類の赤色顔料の在り方、試料の外観色と成分の関係などを特に調査した。 平成11年度は、大分県宇佐市川部高森遺跡、福岡県大刀洗町甲条神社遺跡、福岡県春日市立石遺跡出土試料については各教育委員会より提供を受け各遺跡での赤色顔料出土状況に見合うサンプリング方法、分析方法の検討、墳墓に伴う祭祀遺構から出土する土器に付着残存する赤色顔料についても調査検討をおこなった。 平成12年度は、大分県宇佐市別府遺跡、大分県大分市玉沢条里遺跡にて試料採取、熊本県天水町天水大塚古墳については町教育委員会より提供を受ける。 本研究は、各教育委員会の協力を得て、墳墓発掘調査現場での赤色顔料試料採取とその整理方法および分析試料の作成方法のマニュアル化を目指すものであったが、3年間の調査研究により、遺骸に施す2種類の赤色顔料の在り方を十分把握するための試料採取・調整方法を確立する目途を得ることができた。 出土赤色顔料についての一連の非破壊的調査は、単に遺物を壊さないで調査するということではなく、非破壊で調査する方が、より考古学的に有効な情報を読みとることができる可能性が高いことを示すものでもある。
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