本研究は、近年世界的に研究が進展している構成主義学習論を踏まえ、子ども達の概念形成に重要な影響を及ぼしている教師が保持するプリコンセプションを解明し、子ども達の素朴な概念を科学的な概念へと形成していくための具体的かつ実践的な教授モデルの開発と教師教育プログラムの作成を目的としている。 本年度は、教師が保持するプリコンセプションに関する研究の総括を国内外の文献をもとにおこなうとともに、教師のプリコンセプションの形成に影響を与える科学観、支持する学習論、子ども観について質問紙により調査を実施した。その結果、科学観の調査では教師はkoulaidisら(1989)が行った調査と同様に我が国の小・中学校の教師は現代的な科学観を保持しているものが多いことがわかった。また、小学校の教師はプロセスを教えることを重視し、中学校の教師は系統を重視する教師とプロセスを教えることを重視する教師に分かれること、構成主義研究で考えられている「知識は知識の再構築」に同意する教師も多いが、「知識は受動的に受け取られる」に同意する教師が中学校の理科教師で年代が上がると増加すること、「学習者の意味の構成や再構成を行わせる契機をどこに設定し、どのような授業を展開するか」といった授業研究や概念形成についての研究は学校ではあまり進んでいないこと、教師の子ども観は構成主義学習論を踏まえてのものではなく経験等から得られた子ども観から生まれたものであること等のことがわかった。 また、教師教育プログラム・教授学習モデルの開発に向けて、近年注目されるようになった学びは社会や文化といった他とのかかわりの中で個人の中に構成されていくといった視点からの見直しを図ることとし、授業方略としてコーオペレーティブ学習の導入を試みた。
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