研究概要 |
本年度の研究目的は,西欧諸国における科学教育と技術教育の制度化のプロセスの把握と,そこにおける問題点の解明を継続しつつ,英米独の3つの国において,科学教育と技術教育の境界線はいつ,いかなる理由で,いかにして引かれてきたのかを解明することにあった.そこで本年度は,研究代表者と分担者が,引き続きそれぞれの国について資料収集とその分析を進め,その成果を持ち寄る形で目的の達成を目指した.また研究分担者の藤井は,ドイツの理科教育史を専門とする複数の研究者を訪問し,ドイツの科学教育と技術教育の関わりについてこれまでの成果についてレビューを受け,同時に貴重な資料の収集を行った. 科学教育と技術教育境界線を考えるとき,技術教育の概念をいかに捉えるかが議論となった.いわゆる職業教育は,たとえばアメリカにおいては1917年に制定されたスミス・ヒューズ法以来,国家の重要関心事となり,その後ジョージ・ディーン法,ジョージ・バーデン法,合衆国防衛教育法と引き継がれ,20世紀以前の徒弟的な教育制度から組織的な職業教育制度へと脱皮した.しかしながら,費用便益分析,設計,トレードオフといった,科学教育に対比しての技術教育に固有な考え方はそこまでは十分に取り扱われてこなかった.つまりここに科学教育と技術教育の境界線と接点が存在することが,これまでの研究から明らかになった. 本研究の来年度の課題は,技術教育の意味内容と学校段階を限定した上で,具体的な科学カリキュラムを分析しながら両者の関連性について明確な視点を提供することである.なお本年度はようやく研究成果が見えてきた段階であり,特に研究成果の発表は行っていないが,今年の理科教育学会においてその成果を広く公開し,同時に関係雑誌への投稿を行う予定である.
|