研究概要 |
本研究の目的は,数学で多用される論理的な接続語を中心とした認知的構文について,聴覚障害児と健聴児の場合について比較分析することである.この目的を達成するために,本年度は(1)数学的意味の構成における論理接続語の役割についての理論的検討,と(2)日常の文脈と数学の文脈における聴覚障害児及び健聴児による論理接続語の使用についての調査分析を目標としてきた. (1)については,特に数学における説明や証明についての先行研究(理論的研究と実践的研究)に基づいて,本研究の理論的な枠組みを検討した.また,(2)については,説明や証明に関わって生徒が抱くイメージについて,聴覚障害児と健聴児を対象に調査分析を行った.その結果,聴覚障害児,健聴児に共通して,1つの答えを求めるような問題に比べ,説明や証明を求められる問題について,難しさを感じる生徒が多く見られることが明らかにされた.特に聴覚障害児の場合には,説明や証明において文章で説明することに対して不安を抱くこと,自信をもてないことが少なくないことが見られた.次年度は,今年度の成果をもとに,(3)数学的意味の構成に伴う論理接続語に関わる困難性についての理論的検討,と(4)数学的意味の構成に伴う論理接続語に関わる困難性についての実証的検討を行うことが課題である.
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